2026.09.08 MON

ロゴ作りを通して、自分たちが何を大事にしているのかを学べた話

Work with Cancer のロゴ

(私たちのこのロゴにどんな意味があるか、少しだけ考えてみてください)

正直なことをいうと、「ロゴなんてとりあえず置いておけばいいっしょ」くらいにしか思っていませんでした。

企業や団体のロゴを見て、「この線の角度にはこういう意味があって、ここの色はこんな想いを表現していて……」なんて考えたことは、ほとんどない。

Amazonのロゴに「A 地点から Z 地点までどこへでも配達が可能」という意味があることを知ったときも、「へぇ、そうなんだ」と思ったくらいで、それ以来Amazonを使うたびに感動することもない。

中の人にとっては大事な意味があっても、それを知らない人からすれば「なんとなく目立つアイコン」くらいのものじゃない?と。

なので、Work with Cancer(WWC)のロゴを作ることになったときも、最初はそこまで大きな意味を感じてませんでした。

この領域で活動する以上、安っぽくはしたくない。
紺とゴールドくらいの、信頼感のある色がいい。
Wはちゃんと目立ってほしい。

そのくらいだったと思います。

でも実際にロゴを作り始めてみると、意外にも考えることが多いことに気づいてきました。

一言で言うと「WWCって、結局何を大事にする団体なんだっけ?」ということに、何度も想いを馳せることになりました。

今回、ロゴづくりを主導してくれたのは、デザイナーの中西ちひろさん。
代表の翔一朗の大学時代の友人という縁からお願いすることになったのだけれど、ほぼほぼボランティアに近い形で力を貸してくれました。

それなのに、めちゃめちゃたくさんの案を出してくれた。
2か月くらいの間に、全部で20案くらい。出し戻しの回数も10回以上はあったと思います。

しかも、ただ「こんなロゴはどうでしょう」と形を持ってくるだけじゃない。

「こういう団体なら、こういうことを大事にしているんじゃないか」
「こういう世界観なのではないか」

と、いくつもの仮説を持ってきてくれた。
なんなら、僕らよりWWCのことを考えてくれているんじゃないかと思っているくらいです。

そんな中で、中西さんが持ってきてくれた一つの発想が「金継ぎ」でした。

「金継ぎ」というWWCらしい修復のありかた

金継ぎが施された器

金継ぎは、日本に古くから伝わる修復技法です。
割れてしまった器の破片を漆でつなぎ、その継ぎ目をあえて金で見せる。

元どおりに戻すのではない。
傷や割れた跡を消すのでもない。
それまでとは違う一つの器として、新しく生まれ変わらせる。

中西さんは、このイメージをWWCに重ねてくれました。

全メンバーが直感的に「めちゃくちゃいい!」と感じました。というか、多分実際にそう言いました。笑

がんの治療が始まると、それまで当たり前にあった関係が、少しずつ形を変えていくことがある。
任される仕事が、人づきあいが、時間の使い方が変わる。
本人にも職場にも悪気はないのに、いつのまにか距離ができていたり、本来つながっていたものが、少しずつ離れてしまうことがある。

私たちがやりたいのは、そこをもう一度つなぐことです。

でも、つなぎ直した先は、元の形でなくてもいい。
以前と同じ働き方に戻る人がいてもいいし、まったく違う働き方を選ぶ人がいてもいい。
前より豊かな形になることだってあるかもしれない。

継いだ跡は、隠さなくてもいい。
金継ぎの金のラインのように、「ここに一度、割れた跡があってですね」と、そのまま見せてもいい。

この修復の考え方こそ、まさに私たちが目指しているものにぴったりだった気がします。

私たちが「W」に込めたもの

ロゴを俯瞰すると浮かび上がる「W」

もう一つ大事にしたかったのが「W」でした。

Work with Cancerの頭文字だから、というだけではなく、

当事者と、その周りにいる人
医療の現場と、社会での生活
がんと、就労

のように、それぞれ独立しあう2つの要素が存在しながら、完全に分断されているわけではない。
その間を行き来しながら、たまにぶつかったり、溶け合ったりしながら、その緩衝材としてWWCが存在している。

そんな世界観を、Wという形に込めたかった。

同時に、この領域で活動する上では「信頼」や「品質感」も大事にしたかった。
だから紺とゴールドという色は、ある程度固定して考えていた。

ただ、中西さんはそれを「絶対の正解」としては扱いませんでした。
いろんな形を出してくれた。

僕らも素人ながら、

「ここはもう少し丸い方がいいんじゃないか」
「このラインはちょっとだけ細くできないか」
「これ、本当にWに見える?」
「そもそもこの意味、伝わる?」

と、好き勝手に言いまくり、それでも中西さんは全部受け止めながら、芯を失わずに、また別の案を持ってきてくれた。

中西さんみたいに意思をもって関わってくれる人を大事にしたいと思ったし、
団体としても、当事者だけじゃなく、周りの人も巻き込んでいくことに、やっぱり大きな意味があると再認識できました。

その団体にとってのロゴの本質的な意味は「費やした時間そのもの」かも

ロゴなんて、外から見ればやっぱりどうでもいいのかもしれない。
金継ぎの意味を知らなくてもいい。
Wの中に何が込められているか知らなくてもいい。

それでも私たちにとって、この形を見るたびに、自分たちが何を大事にしたかったのかを思い出せるということが重要なんじゃないかと思います。

誰かに「このロゴってどういう意味なんですか?」と聞かれたときに、自分たちの言葉で話すことができる。
全部の作業に、全部の文字に、全部の形に意味がある。

これは自己満かもしれないですが、やはりそれでいい気もする。
自分たちがそこに込めたものを、何度も語って、未来に語り継いでいく。
そのためには、自分たちの言葉で、自分たちの意思で決めなきゃいけない。

最近は生成AIも含めて、「自分で何かをする」ことのコストパフォーマンスが、どんどん悪くなっているように感じます。
文章も、画像も、ロゴも、それっぽいものなら、すぐに作れる。

だからこそ、自分たちで考えて、迷って、何度も作り直して、時には「もう分からん」となりながら、それでも決める。
その時間そのものに、意味があるのかもしれない。

費やした時間の分だけ、もっと大切になっていく。
それは友達でも、恋人でも、家族でも、仕事でも同じかも。
結果として何ができたかだけじゃなくて、そこに至るまでの時間そのもの。

ロゴを作っただけなのに、ずいぶん大きな話になってしまいました。

とにもかくにも今回、ロゴ作りという一つのプロセスを通して、WWCが何を大事にしたいのかを、改めて考えることができました。

そして、その時間を作ってくれた中西ちひろさんには、本当に感謝しています。
僕らの頭の中にあった、まだ形になっていなかったものを、一緒に悩みながら、目に見えるものにしてくれた。

このロゴを見るたびに、「僕らは、こういうことをやりたかったんだよな」
と、ちゃんと思い出せる気がします。

Work with Cancer のロゴ
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